このコラムではインフィニティ国際学院や教育にまつわるさまざまな情報を、より詳しく掘り下げながらお届けします。
- 目次
∞Educationコラムへようこそ!
第1回目の今回は、ずばり「オルタナティブスクールって何?」についてお話します。
読者の皆様の中には、お子様の進路について色々とお調べになる過程で、初めて「オルタナティブスクール」という言葉に出会ったという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ですが、日本のオルタナティブスクールを取り巻く環境は、制度面を中心に少し複雑です。
そのため、結局どういう学校なのか分からず、「子どもの進路として選んでいいのだろうか」という不安な気持ちをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
まずは今回のコラムを通して、
◆なんだか普通の学校とは違うみたいだけど、具体的には何が違うの?
◆不登校の子のための学校なの?
という疑問を解消していきましょう!
1. オルタナティブスクールとは
まずはオルタナティブスクールについて、その成立過程も含め、学術的な面から紐解いてみましょう。
オルタナティブスクールとは、「公立学校をはじめとした伝統的な教育」(いわゆる「普通の学校」)に対する別の選択肢として存在する学校です。
そのため、子どもや保護者が求める様々な教育ニーズに応えるための特別な教育方法やプログラムを提供しています。
オルタナティブスクールで行われるオルタナティブ教育は、モンテッソーリ主義・シュタイナー主義など、さまざまな哲学や教育方法に基づいています。また、中にはスクール独自の哲学を用いてカリキュラムを作っている学校もあります。
例えばインフィニティ国際学院は、いくつかの教育手法を掛け合わせたような独自の哲学で運営しています。
このように各オルタナティブスクールによって採用している哲学や教育方法が異なっているため、いわゆる「普通の学校」よりも非常に多様な教育の形が用意されているのです。
読者の皆様の中には、いくつかのオルタナティブスクールを調べてみたけれど、学校毎に在り方が違いすぎて「結局、オルタナティブスクールってなんなの?」と混乱してしまった方もいらっしゃるかもしれません。
敢えてまとめるならば、「学校毎に提供している教育が違う」という特殊性こそが、オルタナティブスクール(オルタナティブ教育)の特性であるといえるでしょう。
こうしたオルタナティブ教育は、1920年代の欧米で「もっと子ども本位な教育を!」という理念の元に新しい教育を試みる中で広がっていきました。
そのためオルタナティブ教育には、
1.子どもの生活の重視
2.子どもの情操的側面の尊重
3.学校生活の民主的統制(=教師によるトップダウンではなく、話し合いで物事を決める等)
4.ホリスティックな子ども観
を大切にするという特徴が見られます。
つまりオルタナティブスクールは学校毎の特殊性を通じて、保護者や子どもが求める多様な教育ニーズに応える教育を提供している学校なのです。
このように「オルタナティブスクールはいわゆる『普通の学校』とは違う特殊な学校です」と聞くと、「じゃあ、特殊な子しか入れないのかな?」とも思えてきますよね。しかし、必ずしもそうではありません。
オルタナティブスクールは例えば、
◎特別に優れた分野があり、それを突き詰めたい子
◎才能豊かで幅広い学びを得たいため、普通の学校の学習では物足りない子
◎視野が広すぎるがために、普通の学校の教育に疑問をもってしまった子
◎1歩1歩立ち止まって深く考えながら学習を進めたい子
◎学習を進める前に自分の在り方を見つめ、「自分らしさ」を見つけたい子
◎机上の学習よりも経験や実践を通して五感で学びたい子
◎思春期特有の人間関係に疲れて集団学習に抵抗感を持った子
◎普通の学校でも不満はないが、より自分に合った環境で自分らしく学びたい子
・・・
などなど、幅広い子どもやご家庭を対象としています。
「多様な教育ニーズに応えられる準備がある」ということは、「どのような子どもでも自分らしく過ごせる学校である」ということなのです。
2.オルタナティブスクールでの学び ーインフィニティ国際学院の事例からー
前節ではオルタナティブスクールについての概要を説明してきました。本節では、そうしたオルタナティブスクールでの学びについて見ていきましょう。
ただし、前節でも述べた通り、オルタナティブスクールは学校毎に性格も特色も教育理念も全く異なっています。
そこで本コラムでは、インフィニティ国際学院の事例を取り上げながら、「オルタナティブスクールではどのように学習していくのか」について説明していきます。
子どもの特性・才能に応じた学びの方法を用意する
インフィニティ国際学院では、「個別最適化の学習」を重視しています。
人はそれぞれ、「自身に合った学びの形」が異なります。そこで本学院では入学時に米国発の学習スタイル診断『セルフポートレート™』を受け、「自身に合った学びの形」について5つの項目(特性・優位感覚・学習環境・興味関心・才能)から分析します。
そうして明らかになった自身にとっての最適な学習スタイルに基づきながら、生徒は学習を進めていきます。
例えば本学院の中等部では、午前中が教科学習(国語、英語、数学、社会、理科など)を行うカリキュラムになっていますが、生徒は自身に適した学習環境や学習スタイルを選択して学ぶことができます。
「音楽がかかっていることが、座学や書く作業の時に役に立ちます」という診断結果が出た生徒は、オープンスペースで好きな音楽をかけながら教科学習に取り組んでいます。
また、「誰かと一緒に静かに取り組むことが、座学や書く作業の時に役に立ちます」という診断結果が出た生徒は、チューターが仕事をする側で教科学習をすることで、リラックスしながらも集中できるようです。
個人に合った学習スタイルに基づいて学ぶことは、学びのモチベーションを高めるためにも効果的です。
例えば本学院の高等部の生徒の中に、「表現実行型 / 動く型」「関係影響型」の傾向が強く出た生徒がいました。
これらの傾向からその生徒は、「人を楽しませるような活動やプロジェクトを好む」「視聴覚教材などを用いたり身体を動かす事で最も効率的に学べる」「ユーモアが得意で人を笑わせたりすることも好き」ということが可視化されました。
そうした学びの特徴に基づいて、その生徒には新入生歓迎会や学院説明会のイベント企画を任せることにしました。
特に学院説明会では、集客目標を意識したり、他者との計画的な連携が必要となったりと、戦略を立てることが求められます。その生徒は戦略的思考は苦手な分野ではありましたが、学習スタイル診断に基づいた学びの環境が整っていたため苦手なことも含めてモチベーションを保ちながら主体的に取り組みつづけることができました。
そして、「イベントの企画」を通して情報判断力やセルフマネジメント力を身につけることができたのです。
このように、生徒それぞれの個性や特性を尊重した個別最適化の学習を行うことで、一般的な学校の多くで行われている集団授業型ではなかなか見えづらい個人のスキルや才能をいち早く見つけ、強みとして伸ばしていくことができるのです。
成績表や数字で評価しない、大切なことは「自身らしい成長」
加えてインフィニティ国際学院では、成績をつけません。
一般的な学校では「学習指導要領等の目標に照らして設定した観点」ごとに学習状況の評価と評定を行い、指導要録に記載します。多くの学校ではその指導要録を元にして通知表が作成され、児童生徒や保護者に成績が通知されます。
もちろん本学院でも、生徒がどのようなことを学び、どのような力を育んだかの記録はとります。
しかし、その記録に基づいて成績をつけることはしていません。成績や評価は、どうしてもそれをつける側の人(=先生)の視点が反映されてしまいます。
また、一定の基準に沿った成績が出ることで、「他者と比べて優れているのか/劣っているのか」という視点も生まれます。当然、社会で生きていく上では他者との関わりは重要です。
しかし、他者と成績を比べることで自身の劣っている点にばかり目が向いてしまい、より重要な自身の強みが霞んでしまうのは非常にもったいないことです。
そのためオルタナティブスクールであるインフィニティ国際学院では、成績や評価ではなく、生徒個人の学習の記録を積み重ねることで学習の進み具合を可視化しています。
そうすることで、劣っている点ではなく、成長した点や伸ばすべき強みに目を向けながら自分らしく学ぶことができるのです。
個性は大切。でも「人と共に生きる力」も重要なスキル
このように「個人」や「個性」を尊重する一方で、「他者と共生すること」も大切にしています。
インフィニティ国際学院の8つのコアスキルにおいても身に付けるべき力として「共創・変容力」「コミュニケーション力」を定めています。
生徒には本学院のカリキュラムや本学院での生活を通して、他者と共に生きるための術を獲得してもらいます。
ー「文化を尊重しながら共に生きていく力」
例えば、2022年度の中等部ではアイヌ民族について探究する「ウトゥラノ∞イカスイ」という授業を通年で行いました。北海道ノースビレッジ寮のある上川町にはアイヌの方が今もいらっしゃり、アイヌ文化との繋がりが強い町です。
そのため、「町の外」から来た中等部生が上川アイヌについて理解を深めることは、「上川町の文化を尊重しながら共に生きていく力」を育みました。
ー「敵国」だったはずなのに、フィリピンで感じた歴史の意識
また、2022年度の高等部では、「現地でリアルな体験をし、最大限体感する」「Finding my answer to the SDGs」をテーマとし、フィリピンのレイテ島タクロバン市を訪れました。
生徒たちはタクロバンで数日過ごす中で、日本とレイテ島の関わりや文化の違いについて学んだり考えたりしました。
レイテ島は第2次世界大戦の際に、日本とアメリカ軍を中心とした連合軍が戦った「レイテ沖海戦」の舞台となった場所です。
レイテ島の「マッカーサー・ランディング・メモリアル・パーク」には、アメリカ軍のマッカーサーと兵士たちの銅像や、第2次世界大戦にまつわるフィリピンの歴史を説明した銅板などがあります。
ある生徒は、その銅板が日本軍のことを”enemy”、つまり「敵国」として記載していることや、銅像の裏に連合軍の上陸に安堵しているフィリピン人の情景が彫られていたことに衝撃を受けました。
そして、「当時のフィリピンの人は『日本軍は敵国である』という認識を後世に伝えようとしたほど日本に対して強い嫌悪感を抱いていたのに、どうして今のフィリピンの人は私たちに優しく接してくれるのだろう」という疑問を抱き、現地の方に直接聞いてみたそうです。
すると現地の方からは「過去は過去であって今の日本に罪はないし、その戦争は日本人が起こしたというより日本政府が起こしたことであり日本人には罪はないから僕らは歓迎するよ」という温かい言葉が返ってきたそうです。
彼は、「歴史認識」という非常にデリケートな話題でも、コミュニケーションの取り方に気をつけ怯まず遠慮せずに話題に出して理解し合うことの大切さを学ぶことができました。
さらに別の生徒は同様の体験を通して、「自国の言語で書かれた歴史だけだと、他国からの視点が抜けてしまう可能性がある」ということを学び、自国語だけでなく外国語でも歴史を学んでさまざまな考えを知ることの重要性に気付いたようです。
3.本コラムのまとめ
今回のコラムではオルタナティブスクールに関する「普通の学校とはどのように違うの?」「不登校の子だけの学校なの?」という疑問について、オルタナティブスクールの理念や学習方法の面から説明してきました。
「普通の学校」に対する別の選択肢として発展してきたオルタナティブスクールは、オルタナティブスクール毎にその性格や特色が全く異なります。
その学び方やカリキュラムの種類は、オルタナティブスクールの数だけ存在するといっても過言ではありません。
また、多くのオルタナティブスクールでは机上での一斉集団授業よりも、「子どもの個性に合わせた教育」を重視しています。
オルタナティブスクールには、学校選びさえうまく行けば、型にはまることなく「子どもの自分らしさ」を伸ばせる選択肢が必ずあります。
例えば、Aさんという小学6年生がいたと仮定します。Aさんは普段の小学校でこんなことを考えていました。
そんなAさんに合わせて、地元A中学校とオルタナティブスクール(インフィニティ国際学院)を比較してみるとこのような結果が見えてきました。
今回はインフィニティ国際学院の事例を取り上げましたが、日本には魅力的なオルタナティブスクールが他にもたくさんあります。
ぜひ、各校のオープンスクール等や説明会にご参加なさってみてください!
そうして、それぞれの「私のための学校」を探してみてください!
また、今回のコラムでは、
◆フリースクールとは違うの?
◆1条校とか非1条校って何?
◆「校長先生を親が説得しないといけない」ってほんとう?
といった疑問にはまだ触れておりません。
こちらに関しては、日本の教育制度や法律なども関係しているため、機会を改めて次回以降のコラムでお話ししていきますね。
※1 上記の表は中等部の例です。高等部は提携先の通信制高校との連携により高校卒業資格を取ります。
◆参考文献および参考ウェブページ◆
1、蔵本有紀(2023)「 学校選択のコミュニケーション―オルタナティブスクールの選択可能性を広げるコミュニケーション施策からー」『社会構想大学院大学コミュニケーションデザイン研究科専攻研究成果報告書』
2、『国際教育辞典(The International Encyclopedia of Education: Second Edition)』
3、永田佳之(2005)『オルタナティブ教育 国際比較に見る21世紀の学校づくり』 新評論.
PROFILE
この記事を書いた人 神宮 咲希
インフィニティ国際学院 中等部・高等部 | ライティング(国語表現)講師
小田原短期大学 通信教育サポートセンター(福岡)准教授