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2023.06.28

在校生コラム

ライターMの在校生ストーリー #02

#在校生#高等部

目次
始めに・お礼
旅の準備過程
忘れたくない感覚
プレゼン準備
旅を振り返って
最後に

■この在校生コラムは【毎月28日】に更新予定です。

この連載では「等身大」「もがきながら成長している生徒の軌跡が見えること」という彼女の決めた大切な想いを軸に、スタッフや職員は修正を加えず、ありのままの彼女の生の言葉を掲載していきます。

一般的なレールに沿った公教育の学びではなく、日本と世界を舞台に、常に自分自身と向き合いながらあえて大きな挑戦を繰り返している彼ら。

そんな在校生の一人から毎月リアルタイムで届く想い、成長の軌跡をぜひ毎月ご覧ください。

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#1 在校生ライター 始動!
2023-06-28

始めに・お礼

始めに

こんにちは!
インフィニティ国際学院高等部4期生のMです!

今回は二度目の更新です!
前回記事を更新してから、有難いことに感想を頂いて、大きな励みになりました。
読んでくださった皆様、ありがとうございました!

今回は6月上旬に高等部生が実施した北海道一人旅*についてです。
この旅は私にとって確実に意味を持ったものだったので、なぜそう思ったのかを綴っているこの記事をお読み頂けると嬉しいです。

*「北海道一人旅」・・・普段は集団生活で学びを行なっている生徒たちが、研修期間のうち4日間、”心が動かされる出会い”を求めて道内の一人旅をゼロから計画・実行するプロジェクト

旅の準備過程

現在滞在している北海道上川町層雲峡も緑が増えてきた6月上旬。
高等部生は「面白い人に出会う」というテーマで3泊4日の北海道旅をしました。

1人39000円の交通費・宿泊費を渡され、どこにどうやって行くのか、そこで何をするのかを生徒1人1人が0から計画しました。

チューターから「面白い人に出会う」というテーマを聞いた時、旅の計画をする上で、これをどのように解釈するのかが旅を大きく左右すると感じました。
そのため、下の表のようにそれぞれの言葉を自分の中でどう定義できるか考えました。

 

<面白いをどう定義するか> <人をどう定義するか> <出会うをどう定義するか>
・笑い
・興味深い
・楽しい
・惹かれる
・現存する人
・歴史上の人物
・本や絵などの作者
・何かに携わる人
・人や事件などに偶然に行きあう、ある場所でいっしょになる。
・初めて会う、知る
→大きく分けると2つの意味を持つ →広い範囲で言える →「偶然」であることと「初めて」であることが大事

 

このように思考をしていく中で、この解釈の上では「面白いもの・興味をそそられるものに出会ったとき、それは面白い人に出会ったと同義なのではないか」と気付き、これが今回の旅の指標かつ仮説となりました。
また、有難いことに記事を書く機会を頂いているので、何かを感じ、それを表現したいと思い、何かを感じられる旅にすることがサブテーマとして定まりました。

自分の中でテーマが決まったのはいいものの、今度はそもそも私が面白いと思うもの、興味をそそられるものって何?という問いが生まれました。
この疑問の答えでありながら、北海道という地で、お金と決められた1人で動ける時間を与えられて何ができるのかを考えた時に、いくつかの考えが浮かびました。

一つ目が「SHIROについて知る」です。
SHIROは「自分たちが毎日使いたいものをつくる」という想いからスタートしたコスメティックブランドであり、北海道発の企業です。
また、私が初めて買った香水はSHIROの製品で、全くの偶然ですが、北海道で購入していました。
実はこのSHIRO、4月下旬に本店があった北海道砂川市に「みんなの工場」という施設をオープンさせました。
「みんなの工場」はSHIROの製品を製造する工場に、ショップ、カフェ、キッズスペースとラウンジなどを併設した、人と環境に配慮した循環型の施設です。
元々香りには興味がありましたが、半年くらい前にしっかり香りに興味を持つきっかけがあったので、ちょうどいい機会だと思い、旅の計画に入れました。

旅の目的の一つに選んだ「みんなの工場」by SHIRO

また「原点に戻ってみる」というのもありだと思いました。
インフィニティ国際学院に入った当初、様々な食と景色を体験したいと思っていました。入学イベントのDAY1でも話した記憶があります。
あまり芳しくない状況でのワクワクする機会だから、この旅の中で少し原点に返ってみてもいいのかもしれないと考えました。

そこで、たくさんの飲食店と観光スポットを調べ、いくつかのレストランやカフェと美瑛町にある青い池に行くことにしました。

美瑛町にある青い池

そして最後が、大本命であった「好きな本に出会う」です。
この学校に入ってから特に、文章や発言ではっとさせられる瞬間が多くなり、その瞬間と感覚が好きなことに気付きました。

また、読むのが遅い上に、あまり読書の時間を取らない私にとって、本は一冊一冊がインパクトを持っています。
意識して読む時間を取らないといけないので、その頃の記憶と本の内容が結びついているような感覚です。

私はそうやって新しい本に出会ってきたから、読書量こそ非常に少ないものの、本や文章から受けてきた影響は大きいように感じます。
しかも、本を読むということは、その本を通して作者と登場人物に会う事でもあると解釈しているので、今回の旅のテーマにピッタリだと思いました。
このような考えから、旅の中で本を一冊買い、それを読み切ることにしました。

まずは旭川から砂川へ

予定表


日程
目的
1日目 みんなの工場 SHIROを知る
2日目 好きな本に出合う 面白い人に出会う
3日目 散歩と食 原点に戻る
4日目 青い池 原点に戻る

 

準備期間は、ひたすら好きなものについて考えていたし、ライブのために遠征をすることが多い私にとって、慣れている工程で、ただワクワクしていました。

そして、大きな期待と少しの不安、僅かなパッキングの疲労感が入り混じった感情を抱えながら、旅立ちました。

出会えた人

北海道旅の中で「面白いもの・興味をそそられるものに出会ったとき、それは面白い人に出会ったと同義なのではないか」という仮説は立証され、指標としての役割も果たしていたと思います。
この仮説は「好きな本に出会う」という計画の中でしっかりと確証を得ました。

今回の旅では、「赤い月の香り」という作品とその作者である千早茜さんに出会いました。
あらすじを紹介します。

カフェでアルバイトをしていた朝倉満は、客として来店した小川朔に、自身が暮らす洋館で働かないかと勧誘されます。朔は人並外れた嗅覚を持つ調香師で、幼馴染みの探偵・新城と共に、依頼人の望む香りをオーダーメイドで作っていました。満は朔のもとで働くうち、やがて仕事に誘われた本当の理由を知り…。千早茜『赤い月の香り』(集英社,2023年,帯)

というものです。

この本に出会ったのは旅の一日目に書店で本を選んでいた時です。
計画の時点で「好きな本に出会う」という目標を立てていた為、次の日には読み切ることが決まっていて、軽い気持ちで選べないという思いがどこかストレスでした。
私にとって本を選ぶという行為は普段なら楽しいものであるはずなのに、純粋に楽しめなくなっていて、それを自覚したころには、かなり焦っていました。

しかし、この本に出会った瞬間、タイトルにも表紙にも作者名にも惹かれました。
次に目次に感動し、冒頭の数ページを試し読みしながら「きっとこの本なんだろうな」と思いました。

「きっとこの本なんだろうな」と感じた運命の出会い / 千早茜『赤い月の香り』(集英社,2023)

「運命」と言いたいくらいの素敵さと少しの不思議さ

千早茜さんの書く文章はとにかく私が好きな文章でした。

使われている言葉も言葉の並べ方もとにかく好きで、親しみに似た何かがありました。
また、好きな文章だからどんどん読み進められるけど、無駄にしてはいけないから焦らないようにするという感覚を初めて味わいました。
読了後は満足感と少しの達成感、そして不意に贈り物を貰った時と近しい温かさを得ていました。

「赤い月の香り」の読了後、本の後ろの方に載っていた千早茜さんのプロフィールを目に通してみると、「北海道生まれ」との記載があり、北海道旅で北海道出身の面白い人に出会えたなんて笑っちゃうくらい運命っぽくて少し怖いくらいでした。

冷静な物見をするならば、千早茜さんは今年、「しろがねの葉」という作品で直木三十五賞を受賞しており、その上北海道出身とあれば、北海道内の書店で大きく取り上げられる可能性は高いはずです。
もしかしたらそうやって出会いやすくなっていたのかもしれません。
それでもこの出会いを「運命」と言いたいくらいの素敵さと少しの不思議さをはらんでいました。

「赤い月の香り」という作品と、千早茜さんの文章が好きすぎて、翌日に書店に行き、千早茜さんの本を4冊買いました。
書店を出るとき、泣いてしまいそうになりました。そのくらい嬉しかったです。
旅の最終日には「透明な夜の香り」という「赤い月の香り」より少し前のお話を読み終え、「正しい女たち」という短編集を読み始めました。

こんなに好きな作家さんに出会えて本当に良かったです。

あまりの感動に翌日に書店に行き、千早茜さんの本を4冊購入

「出会いたい人に出会う」

ここまで、出会った人を紹介させていただきましたが、今回の旅では出会いたい人にも出会いました。

「出会いたい人に出会う」って聞きなれない言葉であるとは思いますが、私はその感覚を確かに味わったのです。
その人は、今回の旅で読了した、千早茜さんの「赤い月の香り」と「透明な夜の香り」に登場する、小川朔という人です。

先ほども触れましたが、彼はオーダーメイドで客の望む「香り」を作る天才調香師で人並み外れた嗅覚を持ちます。それは異常とも言えるくらいだから、彼のもとには誰にも言えない事情を抱えた依頼人が次々訪れます。そしてどんな香りでも作ってしまうのです。
私が彼に出会いたいと思ったのは、彼に「探している香り」を作ってほしいという気持ちからです。

私には探している香りがあります。
出会った場所も日付もどんな特徴を持っているかも全部覚えています。
香りってすぐに忘れてしまうものだけど、あの香りを認識したら全体にそれだと分かる根拠のない自信があります。
そのくらい運命的なものでした。

「赤い月の香り」の読了後にはあの香りを思い出して泣きそうになりました。
どこか探すことを諦めかけていた自分を悔みました。

だから、絶対にあの香りにもう一度出会いたい。
しかし、この世には数え切れないほどの香りがあります。
あの香りを探すのはあまりにも大変すぎる。
だから私は彼にあの香りを作ってほしいのです。

出会いたい人に出会うなんて初めての感覚でした。
しかも、この旅で得た初めての感覚はこれだけではないのがこの旅の価値を物語っている気がします。
本を読むことは北海道じゃなくてもできるけど、北海道出身のが書いた千早茜さんが書いた、この話を、このタイミングで読んだことに意味があったように思います。

私はずっとこんな旅を欲していた気がします。
観光や買い物に焦るだけでなく、リラックスして、たくさん何かを感じるような、そんな旅を。

忘れたくない感覚

今回、本を読んでいる間に新しく得た感覚がありました。

 

「あたしの読書は誰かがずっと音読しているみたい」

 

それは誰の声か分からないし、もちろん聞いたことはないけれど、落ち着いた声でちゃんとそこにあるような、そんな声です。
そんな声がずっと読み続けてくれるのです。
もしかしたら、私の読書が遅いのはこれが理由かもしれません。

 

「長いのにしおりが無い本は私を迷子にさせるみたいで少し苦手だった」

 

「赤い月の香り」には栞紐がついていますが、読み終わる直前までそれに気付きませんでした。
本を閉じる度に迷子になってしまってなんとなくそれが嫌でした。
でも、栞紐を見つけた瞬間、安心感を抱きました。
これで迷子にならずに済むと思った気がします。

よく考えてみるとこの学校を受験したときに課題作文の中で紹介した「あたしがおうちに帰る旅」という本にも栞紐がついていた覚えがあります。
あの本を初めて読んだのは小学4年生の時ですから、無意識的に栞がある本が好きだったのかもしれません。

プレゼン準備

旅での出会い後、いつもと違った自分

インフィニティ国際学院では研修の節目のタイミングで学びをアウトプットする場である、「最終発表」という時間があります。
通称「プレゼン」と呼ばれることもあり、どんな表現方法でも、何を伝えたとしてもいい場です。

余談ですが、私はプレゼン前の徹夜の時間も含めて、プレゼンが好きです。
プレゼン前に各々があらゆることを感じていて、何を話すか考えながら準備している時間にそれぞれの思考が見える気がして好きです。
また、誰かのプレゼンを聞いている中で、その人の行動と辻褄が合うようなことを発言しているとハッとしたり、どこかスッキリすることが多いです。
自分がどう評価されるか怖くて、嫌になることもあるけど、特別なことを言えない私が分かり切っていることの中から何をなぜ選んで言うかだと考えるようにしています。

今回のプレゼン準備は無理やり時間を作ったが為に余裕のあるものでした。
旅に行く前からもう言いたいことがあったので、それを元に少しばかり準備を進め、旅立ちました。

ただ、いざ旅が終わって本格的な準備となると、感じたことが点々としていてどうまとめればいいのかに悩みました。
自分の感情を零さないようにするとまとまりがなくなる。
まとまりや完成度を取ろうとすると取り零す感情や感覚がある。
何を選ぶか迷い、どう選ぶか迷い、最後には悩みすぎて悩んでいるのか病んでいるのか分からなくなりました。
今回の準備期間は、旅の終了後一晩しかありませんでしたが、その中でも寮にいる人たちに、アドバイスを求め、迷い、悩み、考えました。
そうやってなんとか方向性が定まった辺りで、また次の壁に当たりました。

タイトル決めです。
いつもは「〇〇研修 最終発表」のようにシンプルなタイトルを付けています。
しかし、旅の中で「赤い月の香り」というタイトルに魅かれた手前、ここでタイトルにこだわらないのはどこか悔しくて、意味のこもったタイトルをつけたくなりました。
旅中に取ったメモを見返したり、写真を見返したりして、何度も旅を振り返りました。
何かを決める時、いつもならいくつかの案が出てその中から魅力的なものを選ぶのですが、今回はそもそも出てきた案が少なかったです。
しかし、その案が自分の中でどんな意味を持っているか考えてみると驚く程良い案であることに気付きました。
そうして決めたタイトルが「柘榴」でした。

このタイトルにした理由は、理由は3つあります。
1つ目は、柘榴が「赤い月の香り」の表紙に描かれていて、旅中ずっと私の頭の中にあったものだからです。
2つ目は、今回の旅と出会った本を表しているような見た目をしているからです。旅も今回の旅の中で読んだ2冊の本も、最後に予想外のことが起こるというよりも、中が詰まっていてしっかり収束していった印象でした。
3つ目は、花言葉が自分の理想と現状を表しているようだからです。柘榴の花と実にはそれぞれに花言葉が付けられています。
柘榴の花の花言葉は「円熟した優雅さ」、柘榴の実の花言葉は「愚かしさ」です。
この大きな対比が、旅で感じた理想と現状を上手く表すことができると感じました。

こうして作っていったプレゼンは、自分にとって嬉しい反応と悔しさを覚えるフィードバックのどちらもを貰いました。
いつもの感じだなと思いつつも、いつもと違ったのは指摘にあまり食らっていない自分がいたことです。
旅で気分転換が出来て、余裕ができたことが要因だと思います。
余裕の大切さを僅かながらに感じました。

旅を振り返って

私が「私だからできた」と思えたこと

然るべき形で出会うことが出来た良い旅だったと思います。

また、今回の学院から与えられた「面白い人に出会う」というテーマへのアプローチと、旅の過ごし方は「アイドル的出会いを知っている私だからできたこと」だと強く思います。
「アイドル的出会い」とは、私の中の感覚をピッタリと表した言葉です。
一方通行ではあるけど出会っていて、それが適切な形の出会い方のことを指します。表現者と受け取り手の間で多く成立すると認識しています。
厳密に言えば、「知る」という状態なのかもしれません。
しかし今は、地球上であればどれだけ離れていても知ったり、出会えたりする時代です。
また、何よりもこれを「出会い」と言ってしまいたいくらい大切な経験であることが「アイドル的出会い」の特徴だと思います。

「アイドル」と聞くとステージで歌って踊るイメージをしたり、そこから派生してネット上で述べられている「バンドのアイドル化」への批判的意見を想像したりする人もいるかもしれません。
私が指す「アイドル」の意味は少し違います。
本来、「アイドル」という言葉は「偶像」という意味を持つ、英語の「idol」から来ています。
実際に会うより、その人がどんな人かを知ることは出来ないように感じるけれど、その偶像的なところに魅かれるのが「アイドル」だと考えています。

(「アイドル」や「アイドル化」などに関しては私自身、もっと調べたいところなのでまだ説明が不十分です。また機会があれば詳しく語るかもしれません。推し文化とも絡んでくるトピックだと思っているので、もし興味を持ってくださる方や説明がピンとこない方は「アイドル」という言葉の歴史や「アイドル化」という言葉自体の意味、「推しとは?」など、調べてみてください。)

近くない場所に「推し」という形で大切な人がいる私にとってアイドル的出会いをすることは簡単で、上手く説明はできないけどどこかで出会い方を知っていたのだと思います。
ここまで「推し」という存在が大きい人は多くないし、その分アイドル的出会いを知っている人も多くない。私だからできた旅だと感じます。
そして何よりも、負のループと言わんばかりの思考を巡らせながら落ちていっていた私が「私だからできた」と思えたことが、この旅で得た一番の収穫なのではないかと思います。

最後に

最後までお読みいただきありがとうございました。
今回の原稿準備は前回よりも精神が安定したうえでのものでした。
余裕を得ることを考えて、得た余裕のなかで懸命に書いた原稿でした。
皆様の心に残る何かはありましたでしょうか。

どうかこの活動が私と読んでくださる方にとって何かのきっかけになり、
いつか「意味があった」と笑って振り返ることができる、確かな道になりますように。

PROFILE

インフィニティ国際学院 高等部 在校生ライターM

インフィニティ国際学院 2022年4月入学 4期生